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2022.7.15 更新

『ウィザードリィ外伝T』の通信機能に触れた雑誌記事について


目次(ページ内リンク)


はじめに

『ドラゴンクエスト(ドラクエ)』をはじめとする、 日本のコンピュータRPG(ロールプレイングゲーム)に大きな影響を与えた 『ウィザードリィ(Wizardry)』(以下、Wizやウィズと省略することも)というゲームをご存じだろうか。 1981年にアメリカのサーテック社からAppleU用ソフトとして発売された 『Wizardry #1 - Proving Grounds of the Mad Overlord』は、 後に国産PC(1985年)やファミコン(1987年)などに移植され、続編も制作されているが、 2021年現在、『ウィザードリィ』シリーズの初期の作品は権利問題等の都合によって、 最新ハードの家庭用ゲーム機への移植(バーチャルコンソール)が難しい現状である。*1

同じRPGでも現在進行形で新作(関連作品含め)の制作が行われ、過去作の移植・リメイクなどによって、 若年層の新しいファンを獲得し続けている『ドラゴンクエスト』(ドラクエ)や『ファイナルファンタジー』(FF)や 『ポケットモンスター』(ポケモン)シリーズをはじめとする、 ゲームを普段しない人でも名前を聞いたことがある有名タイトルと比べると、 『ウィザードリィ』は一般の人にあまり知られてない過去のゲームなのかなと思うのが筆者の雑感である。

そんなWizに筆者が興味を持ったのは、 「ウィザードリィ外伝」と初代「ポケモン」(「かけるのブログ」2016年2月6日)という記事を読んだのがきっかけで、 1991年10月1日(火曜)にアスキーより発売されたゲームボーイ用ソフト『ウィザードリィ外伝T 〜女王の受難〜』は、 1996年2月27日発売の『ポケットモンスター 赤・緑』(いわゆる"初代ポケモン")よりも4年以上早く、 キャラクターやアイテムの転送が可能な通信機能を実装したソフトであるにもかかわらず、 通信機能の面でポケモンと比較して語られることがないことから、 ブログを書いたかけるさんはツイッターでも両者の通信機能や収集等の共通性について数年前から言及している。 ("ウィザードリィ外伝" or "wiz外伝"でツイート検索)

筆者はこの記事を読んで、「そんなゲームがあるんだ!」という驚きと共に、何故、かけるさん以外にこの件について触れたり、 興味を示す人がほとんどいないのかなと不思議に思っているうちに、それまで未プレイだったWizに興味を持ったことから、 1991年秋の『Wiz外伝T』発売前後に通信機能について触れたゲーム雑誌の紹介記事があるのかなと思い、 実際に国会図書館で当時の雑誌記事を調査し、結果報告を兼ねて作ったのがこのページである。

調査対象・範囲は、当時発行された主要ゲーム雑誌である「ファミリーコンピュータMagazine」、 「ファミコン通信」、「ファミコン必勝本」、「マル勝ファミコン」の4誌を中心に、 1990年夏頃から1991年末までの約1年半弱の間に発行された計4誌を調査した。 なお、『ウィザードリィ友の会』という読者投稿コーナーでお馴染みの 「ファミコン必勝本」(1986〜1990)や90年末にリニューアルされた 「ヒッポンスーパー」の91年5月号以前は国会図書館に所蔵されてないが、 90年夏以降の「ファミコン必勝本」を一部入手したので、一部ページ内でも扱ってます。

※ 調査範囲内で未確認の「ファミコン必勝本」は以下の通りで、もし持っている人がいれば 連絡先まで(他誌も募集中)
・「ファミコン必勝本」1990年7月20日号(Vol.14 通号99)
・「ファミコン必勝本」1990年8月3日号(Vol.15 通号100)
・「ファミコン必勝本」1990年9月21日・10月5日号(Vol.18・19 通号102)

サイト内リンク:管理人が所持している「ファミコン必勝本」のメモ
※ zegaoさんから「Hippon SUPER!(ヒッポンスーパー)」1991年1月号は関連記事がなかったことを確認。

結論を言うと、ゲームスタジオによるファミコンへの移植の出来が良かったことから、 次回作(初の和製Wiz)への期待度の高さからゲームボーイ用ソフトとしてはそれなりに誌面で扱われていたが、 通信機能に触れた記事はあまりなく、見逃したであろう記事も多々あると思いつつ、 個人的な考察の方も今後書けたらいいが、いつになるやら…

脚注

*1 ウィザードリィの現時点での版権事情については、以下のリンク先の記事を参考に。

また、2021年6月に突如発表された外伝シリーズの現時点での最新作『五つの試練』(2006年)の リニューアル版(Steam版)の発売はファンの間で大きな話題を集め、 ツイッターの公式アカウントも開設されたが、 発売前日の同月17日に「諸般の事情」で発売が延期され(4gamerの記事参照)、 やはり権利問題に原因があるのではないかと、ファンの間では憶測が飛び交っている。

※ 同作の開発スタッフである徳永剛(外伝U以降のディレクター)と金田剛(外伝シリーズのプログラマー) が4gamerのインタビューを受け、外伝1の通信機能の話を確認し、以下は記事より引用。

4Gamer:
 須田PINさんはウィザードリィの伝道師として,雑誌などにも多く登場されていましたね。

徳永氏:
 当時の宣伝部のメンバーは,みんなウィザードリィが大好きで。
 外伝1に「歴戦の鎧」※5というレアアイテムが登場するのですが, これがどうしても入手できなかったんです。それを見かねた須田PINさんが, 外伝1のキャラクタ転送機能を使って,アイテムを譲ってくれたのを今でもよく覚えています。

※5
呪われたアイテムなのでコレクションにしかならないが,とにかくレア。



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雑誌名と発行号備考
「ファミコン必勝本」1989年11月2日号 通信機能が搭載されたGB版Wizを夢見る読者の声
「ゲームボーイ通信」 (「ファミコン通信」1990年8月3日号増刊) 開発関係者が通信機能を語る(その1)
「ファミコン必勝本」 1990年8月17日・9月3日号 ゲームボーイ版Wiz発表速報!
「マル勝ファミコン」1990年9月14日号 対戦機能の企画も含めて
「ファミコン必勝本」 1990年10月19日・11月2日号 友の会宛てに対戦機能が欲しい声
「ファミコン通信」1991年1月25日・2月8日合併号 開発関係者が通信機能を語る(その2)
「Hippon super!」1991年5月号 発売延期に対する読者からのお便り(対戦不要論)
「マル勝スーパーファミコン」1991年5月24日号 友達のキャラを借りる
「マル勝スーパーファミコン」 1991年8月25日・9月13日合併号同上(アイテム&お金も)
「ファミコン通信」1991年10月11日号 広告
「ファミリーコンピュータMagazine」1991年11月15日号 キャラ増殖のウル技


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「ウィザードリィ友の会」L-132 2人同時プレイ 流通に救出に…

「ファミコン必勝本」1989年11月2日号 (Vol.21 ※10月20日発売) 46ページ

ゲームボーイ版ウィザードリィ未発表の89年秋時点で、興味深い読者投稿があり、以下全文転載する。

――オレ、村正8本もあるぜ。
――じゃあ、1本わけてくれよ。
 もし、ゲームボーイでウィザードリィが発売されたら、こんな会話も冗談ではなくなるわけです。
 ゲームボーイなら、当然いつでもどこでもプレイが可能です。さらに、ケーブルでつないで2人同時プレイができるでしょう。 友達のボルタックの貴重なアイテムを買い占めたり、友達と混成パーティを組んだり、 うかつにも迷宮の下層で全滅したパーティを救出してもらったり、とプレイのしかたも無限に広がるにちがいありません。
 これでみんなの声が大きくなれば、きっとアスキーもゲームボーイ用ウィザードリィを発売してくれるでしょう。
(東京都・PYファレス)

いかがであろうか。まさに、『ポケモン』の開発動機として引き合いに出されるエピソード (田尻氏が『ドラクエU』に登場するレアアイテム「ふしぎなぼうし」を持ってないにもかかわらず、 杉森氏が2つも持っていたことからそれを譲ってほしいという話)に通ずるものがあり、 ウィザードリィがプレイヤーの想像力をかき立てるゲームだとよく言われるのも納得できる気がする。


制作者対談 『ウィザードリィ』は日本で育つ

「ゲームボーイ通信」(「ファミコン通信」1990年8月3日号増刊) 51ページ

『ウィザードリィ外伝T』のディレクターである三田浩とアスキー広報の須田PINの対談記事。 『外伝T』ではパソコン版の『V』をベースに新しい要素も取り入れようと考えている三田さんの話の流れから、 ゲームボーイならではの通信対戦機能について須田さんと語っているので該当部分を下に引用した。

プレイヤー同士が通信機能を用いてモンスターのやり取りを行うRPGというコンセプトの下、 『ポケモン』の開発に当時取り組んでいたであろう田尻さんの考えとは多少異なるが、 須田PIN氏が話している賭けの対象が結果的にアイテムやお金のやり取りに繋がるので、 決して見逃せない記事であると思われる。

須田:  その新しいアイディアって、例の対決モードのことかな。 通信ケーブルを使ってほかの人のキャラクターと戦わせるっていう。 あれは、ぜひ実現させてほしいですね。 『ウィザードリィ』の楽しさって、ほかのプレーヤーとパーティーを自慢し合うことも大きいわけで、 その論争に一気に決着をつけられるのって快感だなあ。

三田:  ゲームボーイの最大のメリットって対戦ゲームでしょ。 RPGの場合の利用法としては、同じゲームをプレーしている人とパーティーの強さを競うことだからね。 まあ、やってみたいなあと思ってるけど、できなかったらゴメンナサイってことで(笑)。努力するよ。

須田:  ついでに、お金やアイテムをかけられたら最高なのになあ。 対戦型RPGというウリがついたら確実に盛り上がっちゃいますよ。絶対。(後略)

※ 『Wiz外伝T』を紹介しているサイト 「RETRO CONSUMERS」を通じて、紹介記事の存在を確認するも、 国会図書館には所蔵されてないことから確認することができず、数年が経過…。 しかし、ゲームボーイに関する情報を主に扱ったサイト 「ゲームボーイクローバー」の管理人の夕さんから記事を提供して頂き、ここにお礼申し上げます。(2020.04.30)

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速報 姿見たり!! GB版Wizardy

「ファミコン必勝本」1990年8月17日・9月3日号 (Vol.16・17 ※8月3日発売) 51ページ

この号から月刊化された「ファミコン必勝本」(※ ムック『蘇るファミコン必勝本』(Amazon) 77ページ参照)の「ゲームボーイクラブ」のコーナーに掲載された 『ゲームボーイ版ウィザードリィ』の発表を受けての紹介記事。 記事内に「通信機能つきでアイテム、お金の受渡しがOKの予定とのこと。」という一文があり、 次ページ(p52)の「ウィザードリィ友の会」でも同様の情報を読者に届けていて、 キャラクターの転送については記事内で扱っていないが、 『ウィザードリィ』では、お金やアイテムを各キャラクタ―が所持することができるので、 勘の鋭い読者は通信によるキャラクターの転送に気づいたのかもしれない。


ゲームボーイに用意された新たなるシナリオと迷宮

「マル勝ファミコン」1990年9月14日号 (Vol.15 ※8月24日発売) 100ページ

アスキー発売日未定価格未定RPG対戦あり

ゲーム雑誌の新作ゲーム紹介記事には上記のような表がよくあるが、 「さらに対戦ゲームも企画中。プレイヤー間でアイテムやお金の交換が可能になる。」と本文内でも紹介され、 発売が告知された最初の時点で、ゲーム内の通信機能について記事内でも触れている。

国会図書館で検索するときの注意書き

""という字を〇で囲んだゲーム雑誌「マル勝ファミコン」を国会図書館で検索する際、 "(勝)ファミコン" (NDL-OPACのリンク)と入力しないと検索時にヒットしないので注意。 勿論、出版社に"角川"、タイトルに"ファミコン"と入力すれば、 検索時に表示されるので、困ったときは参考に。

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「ウィザードリィ友の会」V-196 ゲームボーイ版に対戦は?

「ファミコン必勝本」1990年10月19日・11月2日号 (Vol.20・21 ※10月5日発売) 120ページ

通信でのアイテムやお金の受け渡し以外に、対戦機能も付けてほしいという読者投稿を確認。

・GB版ウィズで他人のキャラと自分のキャラを対戦できたらスゲー面白いと思う! アイテムやお金の受け渡しなんてそんなのあたりまえだあきら!やっぱり対戦だ! 「俺のゴン太君VSオマエののっぱさんだー!」って出来たら絶対に楽しい!! でもキャラの移動ができたら、「1万Gでその女渡せ!デヘヘ…」なんてことも…!!
(東京都・LORD姫之樹)



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快傑くまくん 番外編 くまくん南青山を行く

「ファミコン通信」 1991年1月25日・2月8日合併号  (No.2・3 1月11日発売) 165ページ

見出しだけ見てもどんな記事なのかさっぱり分からないかと思うが、 ウィザードリィの伝道師ことアスキー広報の須田Pinと現場に偶然居合わせた 『Wiz外伝T』のディレクターである三田浩 (ファミコン版ウィザードリィのプロデューサーであり、最重要人物の一人)のインタビュー記事。 「ゲームボーイ通信」のコーナーで、この時点では発売直前であった『Wiz外伝T』が紹介され(p162〜165)、 最後の1ページを2人へのインタビューで構成している。

インタビュー冒頭から当初の1991年1月発売予定から2月に延期された経緯(通信機能の導入による遅れ)を説明していて (2月8日発売の次号の「2月22日号」の発売スケジュール欄で5月下旬に発売が延期したことを確認し、 実際に発売されたのは91年10月)、見出しに登場する取材者の快傑くまくんは対戦モード (友達のパーティーがダンジョン内で遭遇)を予想するも、須田・三田両氏は対戦の可能性を否定せず、 キャラクターやアイテムの移動などに使う予定であることを取材時に明かし、 ポケモン発売以前のゲームボーイの通信機能の歴史を考えた場合、両氏の発言は重要であると思われる。
※ 以下、記事前半部分を転載

くま どーも、はじめまして。快傑くまです。開発は順調に進んでいますか?

三田 まぁ、当初の1月発売予定が2月にずれ込んじゃったけど、いまのところ順調といえるんじゃないかな。

須田 でもさ、三田さん、アレつけちゃうと、やっぱり1ヵ月ほど遅れちゃうでしょ。

くま えっ、アレ? アレっていうと、ゲームボーイ版だからして、ひょっとすると対戦モードですか?

三田 うん、そうなんだよね。要望が多いから、なんとかしたいんだけれどね。

くま 対戦モードはついてほしいけど、そうなると発売日が延びてしまう。これは大きなジレンマだなあ。 もし、対戦が実現したとすると、友達のパーティーにダンジョンのなかで出会ったり、 戦ったりすることができるようになるんですか?

三田 う〜ん、それはちょっと難しいかなあ。たぶん、訓練場で戦うことになると思う。 対戦モードがつくかどうかについては、いまのところ五分五分というところだし……。 でも、対戦できなくても、キャラクターの移動だけはできるようにするよ。

須田 友達の強いキャラとパーティーを組んで、レベルアップしたり、貴重なアイテムを譲ってもらったりすることが できるようになるわけだね。あれっ、何かずるいことばっかだなぁ(笑)。

※ 引用者注:記事前半部分を転載

インタビューの後半に差し掛かると、ゲームの具体的な仕様(裏ダンジョンやボスの存在)や 『外伝T』というタイトルから続編の可能性などについて、Wizファンが望むであろう情報を求めて両氏に迫っている。 また、ウィズフリークであるライターの渋谷洋一と他一人がインタビューとは別枠の記事下に、 ゲームをプレイした感想を寄せている。

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「ウィザードリィ友の会」V-227 ゲームボーイ版のお話パート2

「Hippon super!」1991年5月号 129ページ

読者参加交流型のコーナーである友の会宛てに興味深い投稿があり、以下一部転載する。

はたして発売日を延ばしてまでGB版「外伝」に対戦プレイは必要でしょうか? 友の会の読者の中でも対戦しようと思っている人はあんまりいないのでは? だいたいそんな事(失礼)に使うメモリがあるのなら英語モードや線画モードを付けてくれた方がよっぽどうれしいですけど。 (中略)

(東京都・ガラクタ工場)

引用した投稿者の要望はこんな感じで最後まで続くのだが一旦置いといて、 対戦機能は『外伝T』には未搭載(93年発売の『外伝V』に実装)ではあるが、 91年1月の「ファミコン通信」のインタビュー記事内で、 キャラクターの転送に通信ケーブルを使う予定であることをメーカー側(アスキー)が話していて、 同誌の90年秋の友の会の読者投稿で、対戦機能が欲しい声を確認できる。 この投稿者は当初の91年1月発売の延期の原因として、通信機能の存在を槍玉に挙げているが、 筆者が未確認の同誌バックナンバーにも同様の紹介記事や読者投稿があったのかもしれない。(情報求む!)

メモ:1991年1月5日に九段会館ホールで開催されたウィザードリィ誕生10周年記念祭「WIZ91」にて、 4月の発売延期をアナウンス。(「ヒッポンスーパー」91年3月号の友の会より)

読み物: GBソフトにおける通信交換と通信対戦の歴史「かけるのページ」

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リルガミンにおとずれた災い……

「マル勝スーパーファミコン」1991年5月24日号 (Vol.8) 135ページ

この号から誌名を変更した「マル勝」でと紹介された記事(8月発売予定)。 3つある小見出しの一つに、"見どころCHECK! 対戦ケーブルで楽しさ倍増"と、 キャラクターの転送ができることを紹介し、本文内では通信ケーブルと表記している。


暗い迷宮に秘められた謎を解き明かせ

「マル勝スーパーファミコン」1991年8月25日・9月13日合併号 (Vol.14) 125ページ

地下2Fまでのマップやレベル2呪文を主に紹介した記事(9月発売予定)。 小見出しに、"対戦ケーブルをつなぐと?"と、キャラの転送ができることをこれまで同様に紹介し、 通信時のゲーム画面も掲載。
※ 画面下には、"GBならではのシステムだね。 悪用したりしちゃダメだぞ。"と注意書きを確認

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(左)ゲームボーイ初の本格的ファンタジーRPG ウィザードリィ・外伝T
(右)中身まるごとウィザードリィ

「ファミコン通信」1991年10月11日号 146〜147ページ

2ページ分掲載された『Wiz外伝T』発売前後に掲載された広告記事で、 翌10月18日号(146〜147ページ)や10月25日号(134〜135ページ)にも同じ記事を確認。 見出しは左のページが横書きで、右のページが縦書きになっていて、大きいものをとりあえず取り上げてみた。 ゲームボーイとソフトが敷き詰められた宝箱のイラストとハガキでの応募による読者プレゼント企画が目を引くが、 "ゲームボーイを2台つなげばキャラクター、アイテムの転送も可能。"というテキストを確認できた。


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キャラを増殖できる(ウル技)

「ファミリーコンピュータMagazine」1991年11月15日号  No.22  146ページ

「ウル技」のコーナーに掲載されたキャラクタ―増殖の裏技を紹介した記事で、 通信ケーブルではなく対戦ケーブルと、記事内では表記している。


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開発スタッフに関する覚え書き

下記の関連書籍などを頼りに開発史もいずれ書けたらいいが、通信機能の実装となると、 ディレクターの三田浩(アスキー)、プログラマーの金田剛(アスキー)に加え、 "Program Adviser"としてクレジットされ、 ファミコン版のプログラマーであった黒須一雄(ゲームスタジオ)、 ゲームデザインを担当した関塚典弘(ゲームスタジオ)の4人を中心に実装されたと思われ、 アスキー広報の須田PINもアドバイザーとして、 ゲームの仕様等に関わっていることを後述の『ウィザードリィマガジン』で話していて(最後に引用)、 前述したファミ通のインタビューで、 通信機能の話を三田氏と共に話していることから、この5人が鍵を握っていると思われる。 筆者はプログラムに関する基本的な知識すら持ってないので、 通信機能の実装がどれくらい大変なのかはよく分からないが、発売日を半年以上延期させたのは、 入念なゲームバランスの調整(戦闘の攻撃時のバグは残ったが…)と共に、 通信機能を実装させるために開発者らが延期を決めたのではないのだろうか。

オッス! 須田PINだ。じつはボクは開発スタッフなのだ。といっても、プログラムしたり、 グラフィックを描いたりするんじゃないぞ。アドバイザーなのだ。もちろんお茶汲みなんかじゃない。 ソフトに関して「ここは、回転床じゃなくて、ピットのほうがいいんじゃない?」とかいえちゃうんだ。

出典:『ウィザードリィマガジン 生誕10周年記念出版』68ページ (MSXマガジン編集部、1991年発行)

ウィザードリィマガジン 生誕10周年記念出版

MSXマガジン編集部 特別編集 / 1991年1月20日発行  駿河屋  Amazon
アスキーから発行されたムックで、発売前(3月発売予定と記載され、その後延期) の『Wiz外伝T』についての情報を約20ページも扱っているが(須田PINが聞き手の関塚インタビュー有)、 残念ながら通信機能については触れられてない。

ウィザードリィ外伝T攻略の手引き

ファミコン通信部責任編集 / 1991年10月31日発行  Amazon
アスキームックとして発行された攻略本で、キャラメル・ママが構成を担当。 業界関係者や三田浩のコラムに加え、須田PINとベニー松山の対談(65〜68ページ)が掲載。 三田氏のコラム「画面に苦心して、GB版ウィズ完成 ●ビジュアル化を進めてみた」(64ページ)では、 ゲームボーイの画面のグラフィックについて主に書かれている。

メモ:通信機能について触れられた箇所も確認。(119ページ参照)

ウィザードリィ プレイヤーズ フォーラムVol.1

アスキー第四書籍編集部 / 1992年6月27日発行  駿河屋  Amazon
本作でゲームデザインを担当した関塚典弘氏のインタビューで通信機能に触れていて、 かけるさんのツイート参照。

忍者増田のレトロゲーム忍法帖

2017年3月21日発行  インプレス  Amazon
※ サイト内リンク: 忍者増田氏がポケモンについて書いた「ファミ通」(1996年6月28日号)の紹介記事へ戻る

本作のキャラクターデザインを担当した池上明子氏のパーティーがダンジョン内で全滅したことから、 「ログイン」や「ファミ通」などでライターとして活躍した著者である忍者増田氏は、 自身が育成したキャラクターを池上氏のソフト(カートリッジ)に転送し、 見事、救出に成功させた当時の思い出話を書き綴っている(105ページ参照)。

そういえば、モンスターデザイン担当の池上さん自身も『外伝T』をプレイしていたんだけど、 彼女のパーティーが全滅したというので、 拙者のパーティーを池上さんのカートリッジに通信ケーブルで送り込み、 死体を回収してあげたこともありました。 こういうことが手軽にできるのもゲームボーイの良さでしたね。

関連動画(YouTube): ウィザードリィ・外伝(ゲームボーイ版) 高橋ピョン太と忍者増田が語るレトロゲーム雑談トーク番組 【ログプラスワン - 007】
「レトロゲームで遊ぼう!」チャンネルで2021年6月21日に公開

ウィザードリィの深淵 -FC版WIZの30年-

ゆずもデザイン / 2017年5月14日発行  BEEP をはじめに委託販売
本作の開発スタッフである関塚典弘(現・関弘?)&金田剛に加え、 アスキー広報の須田PIN&ジェネラルマネージャーの佐藤悟 <ウィザードリィを日本に持ち込んだ男>のインタビューが掲載された同人誌で、 通信機能については触れられてないが非常に読み応えあり。( サークル代表のPin氏による本を紹介したTwitterのモーメント)


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ここぞとばかりに口を出す ウィズフリーククロスレビュー (p91)
ウィザードリィ友の会 ゲームボーイ版 ウィザードリィ・外伝T ☆ 発売記念特集 (p92〜93)

「Hippon super!」1991年11月号 91〜93ページ

通信機能には触れた記事ではないが、 クロスレビューでゲームの難易度について指摘している文章があったり、 「友の会」内に掲載された攻略情報でもファミコン版との違いなどについて、 いろいろ書いてあったので今回取り上げてみた。

クロスレビュー 91ページ

鈴木一弘、山本祐信、ベニー松山、根本康弘の4名がレビューし、それぞれ10点、10点、9点、8点と採点。 この中で個人的に取り上げたいのが、8点を付けた「友の会」担当者の根本康弘のレビューで、 プレイ雑記(ページ下)の方で一部抜粋してます。

友の会 92〜93ページ

ゲーム序盤の攻略を目的とした特集で、参考用に地下4階までのマップが掲載されるも、 トラップ等は表示されないことから"デュマピック"頼みではなく、マッピングを推奨している。 また、新しい呪文である"ソコルディ"と"バモルディ"で召喚できるモンスターのデータ等もあり、 呪文中心の戦闘のシビアさであったり、お馴染みのリセット技についても言及されている。


「ウィザードリィ友の会」外伝Uにまつわる転送の秘密

「Hippon super!」1992年11月号 146ページ

続編である『ウィザードリィ外伝U』(92年12月発売)の通信に関連する読者投稿があったので今回取り上げてみた。 通信ケーブルを使ってキャラクターを転送する場合と「転生の書」を用いた場合の違いについて質問し、 アスキーの須田PINの電話での回答が誌面に掲載されている。


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実際にゲームをプレイした雑記

『Wizardry外伝T』の通信機能に触れた雑誌記事を探し始めてから数か月後の2017年夏から秋にかけての話。 Wizに何となく興味を持ったので、実際にプレイしたいなぁと思っていると、 ゲームボーイ版のドラクエ(ロトシリーズの『T・U』と『V』)や『魔界塔士Sa・Ga』、『聖剣伝説 FF外伝』、 『カエルの為に鐘は鳴る』などと共に中古屋で売っているのを見かけ、どれも以前から興味があったので、 この時に購入し(説明書なし)、エンディングを目指してプレイした。

このゲームボーイ版をゲームボーイの作品だから初心者向けだなどとは思わないで欲しい。 これこそまさにウィザードリィマニア、ファンのための作品だ。 今までのファミコン版ウィザードリィを1度以上プレイしながらも、 なぜ面白いのかが理解できなかった人はこの作品を遊んでもきっと何も得るものはないだろう。 あきらめたほうがいい。

一旦、本題に入る前に、 『ヒッポン』の読者投稿コーナー「ウィザードリィ 友の会」担当の根本康弘氏のレビューをまず引用し、 筆者がこの文章を読んだ2017年当時はWiz未経験だったので、話をうまく呑み込めなかったが、 その後実際にゲームをプレイしてみて、気持ちがよく分かりました。
筆者は『Wiz外伝T』のソフトを購入した初日に数十分プレイしたが、 適当にキャラを作って武器と防具を一応装備させるも、 ちゃんとマッピングもしてないのでさっそく迷子になり(闇雲に歩き回った結果)、 仲間がダンジョン内のどこで死んだかも分からずじまいに…。 ウィザードリィはプレイ前の予備知識がなければ、クリアするのはまず不可能なゲームであることを痛感し、 知識をそれなりに詰め込んでから数日後にゲームを再開。

最初はゲームのシステムを理解するのに大分時間がかかり、 紹介・攻略サイト(脚注へ)と終始にらめっこで、 helepolis氏によるニコ動のゆっくり実況プレイ動画 (編集にも凝ってて、ゆっくり特有のシュールな笑いが面白い)などを参考に、 ダンジョン内での基本の歩き方を学び、Wizの面白さを少しずつ理解することができた。 正直に話すと、筆者は自力でマッピングせずに攻略サイトなどを見ながらゲームをプレイしていたが、 もし、初めてプレイする場合はノート(方眼紙)と鉛筆を用意して、自力でマッピングすることを強く推奨し、 未知のマップを自分の手で作っていく(埋める)ことがウィズの醍醐味ともいえるだろう。
常に死が待ち構えている戦闘の厳しさであったり、仮にマップを見ながらだとしても、 ダンジョンを一歩一歩探索する際のあの緊張感も他のゲームではなかなか味わえないものだなと感じ、 リセットを何回も繰り返しながらも、何とか本編を無事クリアすることができた。 (グレーターデーモンの増殖などは未だにトラウマである…)

本編クリアから数週間後、 罠の解除と戦闘時の「オーディンの瞳」要員だった盗賊を忍者に転職させてみたいと思ったので、 本来のゲームクリアには到底足りていないであろうキャラのレベル上げと「盗賊の短刀」探しを行うためにゲームを再開。 「ファウストハルバード」を所持した戦士がグレーターデーモンに太刀打ちできるようになった頃、 「盗賊の短刀」をついに入手! パーティーの成長を実感し、 最終目標である「転生の書」入手の為にまだ見ぬアイテムを求めて、ダンジョン内を彷徨い続けるが、 戦士のレベルが100を超えても一度も目にしていないアイテムが「村正」と「黒いブーツ」の2種類あり、 続編の『外伝U』もそろそろやりたくなってきたので(2018年秋〜冬にかけてプレイし、 以前のサイト更新時の雑記(サイト内リンク) にも感想をちょっと書き綴っていて、黄泉のエリアを十分に体験しました)、『外伝T』は一旦完結することにした。

※ 2021年3月、ファミコンの1〜3をクリアして(アイテム・コンプリートは未達成)、 久々に『外伝T』を最初からプレイしてみたいなぁと思ったので、 セーブデータを消す前に今度こそボルタック商店に全アイテム納品を目指してみようかなと、数時間プレイしたら、 「村正」(シリーズ通じて初であり、しかも2本!)と「黒いブーツ」をあっさり入手してしまった…。(それでも嬉しい!)

このゲームを語るうえで欠かせない話題である <戦士の攻撃の致命的なバグ(aDb+cのcの値が0になるらしい)>について最後に書くと、 序盤〜中盤は攻撃が敵に全然ヒットしなくて、ゲームバランス的にかなり苦しいが、 前衛の戦士は後衛の盾代わりだと割り切ってしまい、 魔法使い(メイジ)が"マハリト"以降の呪文を覚えてしまえばだいぶ楽になった気がするものの、 今後再びプレイした際にどのような感想を持つのかなとちょっぴり思う (終盤は逆に攻撃魔法が敵にほとんど効かなくなり、コルツ必唱であることも含めて)、今日この頃である。

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脚注(本文に戻るスペシャル・サンクス

かけるさんの紹介記事

ファミコン版の内容ではあるが、外伝Tでもそれなりに通用し、基礎知識として読むのをおすすめ!
教養としてのウィザードリィ入門(ブログ)  ファミコン版ウィザードリィのすすめ(サイト)




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