目次(ページ内リンク)
はじめに
『ドラゴンクエスト(ドラクエ)』をはじめとする、
日本のコンピュータRPG(ロールプレイングゲーム)に大きな影響を与えた
『ウィザードリィ(Wizardry)』(以下、Wizやウィズと省略することも)というゲームをご存じだろうか。
1981年にアメリカのサーテック社からAppleU用ソフトとして発売された
『Wizardry #1 - Proving Grounds of the Mad Overlord』は、
後に国産PC(1985年)やファミコン(1987年)などに移植され、続編も制作されているが、
2021年現在、『ウィザードリィ』シリーズの初期の作品は権利問題等の都合によって、
最新ハードの家庭用ゲーム機への移植(バーチャルコンソール)が難しい現状である。*1
脚注*1 ウィザードリィの現時点での版権事情については、以下のリンク先の記事を参考に。
また、2021年6月に突如発表された外伝シリーズの現時点での最新作『五つの試練』(2006年)の
リニューアル版(Steam版)の発売はファンの間で大きな話題を集め、
ツイッターの公式アカウントも開設されたが、
発売前日の同月17日に「諸般の事情」で発売が延期され(4gamerの記事参照)、
やはり権利問題に原因があるのではないかと、ファンの間では憶測が飛び交っている。 4Gamer:
「ファミコン必勝本」1989年11月2日号 (Vol.21 ※10月20日発売) 46ページ
ゲームボーイ版ウィザードリィ未発表の89年秋時点で、興味深い読者投稿があり、以下全文転載する。 ――オレ、村正8本もあるぜ。
いかがであろうか。まさに、『ポケモン』の開発動機として引き合いに出されるエピソード
(田尻氏が『ドラクエU』に登場するレアアイテム「ふしぎなぼうし」を持ってないにもかかわらず、
杉森氏が2つも持っていたことからそれを譲ってほしいという話)に通ずるものがあり、
ウィザードリィがプレイヤーの想像力をかき立てるゲームだとよく言われるのも納得できる気がする。
「ゲームボーイ通信」(「ファミコン通信」1990年8月3日号増刊) 51ページ
『ウィザードリィ外伝T』のディレクターである三田浩とアスキー広報の須田PINの対談記事。
『外伝T』ではパソコン版の『V』をベースに新しい要素も取り入れようと考えている三田さんの話の流れから、
ゲームボーイならではの通信対戦機能について須田さんと語っているので該当部分を下に引用した。 須田: その新しいアイディアって、例の対決モードのことかな。 通信ケーブルを使ってほかの人のキャラクターと戦わせるっていう。 あれは、ぜひ実現させてほしいですね。 『ウィザードリィ』の楽しさって、ほかのプレーヤーとパーティーを自慢し合うことも大きいわけで、 その論争に一気に決着をつけられるのって快感だなあ。
※ 『Wiz外伝T』を紹介しているサイト
「RETRO CONSUMERS」を通じて、紹介記事の存在を確認するも、
国会図書館には所蔵されてないことから確認することができず、数年が経過…。
しかし、ゲームボーイに関する情報を主に扱ったサイト
「ゲームボーイクローバー」の管理人の夕さんから記事を提供して頂き、ここにお礼申し上げます。(2020.04.30)
「ファミコン必勝本」1990年8月17日・9月3日号 (Vol.16・17 ※8月3日発売) 51ページ
この号から月刊化された「ファミコン必勝本」(※
ムック『蘇るファミコン必勝本』(Amazon) 77ページ参照)の「ゲームボーイクラブ」のコーナーに掲載された
『ゲームボーイ版ウィザードリィ』の発表を受けての紹介記事。
記事内に「通信機能つきでアイテム、お金の受渡しがOKの予定とのこと。」という一文があり、
次ページ(p52)の「ウィザードリィ友の会」でも同様の情報を読者に届けていて、
キャラクターの転送については記事内で扱っていないが、
『ウィザードリィ』では、お金やアイテムを各キャラクタ―が所持することができるので、
勘の鋭い読者は通信によるキャラクターの転送に気づいたのかもしれない。
「マル勝ファミコン」1990年9月14日号 (Vol.15 ※8月24日発売) 100ページ
ゲーム雑誌の新作ゲーム紹介記事には上記のような表がよくあるが、 「さらに対戦ゲームも企画中。プレイヤー間でアイテムやお金の交換が可能になる。」と本文内でも紹介され、 発売が告知された最初の時点で、ゲーム内の通信機能について記事内でも触れている。 国会図書館で検索するときの注意書き
"勝"という字を〇で囲んだゲーム雑誌「マル勝ファミコン」を国会図書館で検索する際、
"(勝)ファミコン"
(NDL-OPACのリンク)と入力しないと検索時にヒットしないので注意。
勿論、出版社に"角川"、タイトルに"ファミコン"と入力すれば、
検索時に表示されるので、困ったときは参考に。
「ファミコン必勝本」1990年10月19日・11月2日号 (Vol.20・21 ※10月5日発売) 120ページ通信でのアイテムやお金の受け渡し以外に、対戦機能も付けてほしいという読者投稿を確認。 ・GB版ウィズで他人のキャラと自分のキャラを対戦できたらスゲー面白いと思う! アイテムやお金の受け渡しなんてそんなのあたりまえだあきら!やっぱり対戦だ! 「俺のゴン太君VSオマエののっぱさんだー!」って出来たら絶対に楽しい!! でもキャラの移動ができたら、「1万Gでその女渡せ!デヘヘ…」なんてことも…!!
「ファミコン通信」 1991年1月25日・2月8日合併号 (No.2・3 1月11日発売) 165ページ
見出しだけ見てもどんな記事なのかさっぱり分からないかと思うが、
ウィザードリィの伝道師ことアスキー広報の須田Pinと現場に偶然居合わせた
『Wiz外伝T』のディレクターである三田浩
(ファミコン版ウィザードリィのプロデューサーであり、最重要人物の一人)のインタビュー記事。
「ゲームボーイ通信」のコーナーで、この時点では発売直前であった『Wiz外伝T』が紹介され(p162〜165)、
最後の1ページを2人へのインタビューで構成している。 くま どーも、はじめまして。快傑くまです。開発は順調に進んでいますか?
インタビューの後半に差し掛かると、ゲームの具体的な仕様(裏ダンジョンやボスの存在)や
『外伝T』というタイトルから続編の可能性などについて、Wizファンが望むであろう情報を求めて両氏に迫っている。
また、ウィズフリークであるライターの渋谷洋一と他一人がインタビューとは別枠の記事下に、
ゲームをプレイした感想を寄せている。
「Hippon super!」1991年5月号 129ページ
読者参加交流型のコーナーである友の会宛てに興味深い投稿があり、以下一部転載する。 はたして発売日を延ばしてまでGB版「外伝」に対戦プレイは必要でしょうか? 友の会の読者の中でも対戦しようと思っている人はあんまりいないのでは? だいたいそんな事(失礼)に使うメモリがあるのなら英語モードや線画モードを付けてくれた方がよっぽどうれしいですけど。 (中略)
引用した投稿者の要望はこんな感じで最後まで続くのだが一旦置いといて、
対戦機能は『外伝T』には未搭載(93年発売の『外伝V』に実装)ではあるが、
91年1月の「ファミコン通信」のインタビュー記事内で、
キャラクターの転送に通信ケーブルを使う予定であることをメーカー側(アスキー)が話していて、
同誌の90年秋の友の会の読者投稿で、対戦機能が欲しい声を確認できる。
この投稿者は当初の91年1月発売の延期の原因として、通信機能の存在を槍玉に挙げているが、
筆者が未確認の同誌バックナンバーにも同様の紹介記事や読者投稿があったのかもしれない。(情報求む!)
「マル勝スーパーファミコン」1991年5月24日号 (Vol.8) 135ページこの号から誌名を変更した「マル勝」でと紹介された記事(8月発売予定)。 3つある小見出しの一つに、"見どころCHECK! 対戦ケーブルで楽しさ倍増"と、 キャラクターの転送ができることを紹介し、本文内では通信ケーブルと表記している。
「マル勝スーパーファミコン」1991年8月25日・9月13日合併号 (Vol.14) 125ページ
地下2Fまでのマップやレベル2呪文を主に紹介した記事(9月発売予定)。
小見出しに、"対戦ケーブルをつなぐと?"と、キャラの転送ができることをこれまで同様に紹介し、
通信時のゲーム画面も掲載。
「ファミコン通信」1991年10月11日号 146〜147ページ
2ページ分掲載された『Wiz外伝T』発売前後に掲載された広告記事で、
翌10月18日号(146〜147ページ)や10月25日号(134〜135ページ)にも同じ記事を確認。
見出しは左のページが横書きで、右のページが縦書きになっていて、大きいものをとりあえず取り上げてみた。
ゲームボーイとソフトが敷き詰められた宝箱のイラストとハガキでの応募による読者プレゼント企画が目を引くが、
"ゲームボーイを2台つなげばキャラクター、アイテムの転送も可能。"というテキストを確認できた。
「ファミリーコンピュータMagazine」1991年11月15日号 No.22 146ページ
「ウル技」のコーナーに掲載されたキャラクタ―増殖の裏技を紹介した記事で、
通信ケーブルではなく対戦ケーブルと、記事内では表記している。
開発スタッフに関する覚え書き
下記の関連書籍などを頼りに開発史もいずれ書けたらいいが、通信機能の実装となると、
ディレクターの三田浩(アスキー)、プログラマーの金田剛(アスキー)に加え、
"Program Adviser"としてクレジットされ、
ファミコン版のプログラマーであった黒須一雄(ゲームスタジオ)、
ゲームデザインを担当した関塚典弘(ゲームスタジオ)の4人を中心に実装されたと思われ、
アスキー広報の須田PINもアドバイザーとして、
ゲームの仕様等に関わっていることを後述の『ウィザードリィマガジン』で話していて(最後に引用)、
前述したファミ通のインタビューで、
通信機能の話を三田氏と共に話していることから、この5人が鍵を握っていると思われる。
筆者はプログラムに関する基本的な知識すら持ってないので、
通信機能の実装がどれくらい大変なのかはよく分からないが、発売日を半年以上延期させたのは、
入念なゲームバランスの調整(戦闘の攻撃時のバグは残ったが…)と共に、
通信機能を実装させるために開発者らが延期を決めたのではないのだろうか。 オッス! 須田PINだ。じつはボクは開発スタッフなのだ。といっても、プログラムしたり、 グラフィックを描いたりするんじゃないぞ。アドバイザーなのだ。もちろんお茶汲みなんかじゃない。 ソフトに関して「ここは、回転床じゃなくて、ピットのほうがいいんじゃない?」とかいえちゃうんだ。 ウィザードリィマガジン 生誕10周年記念出版
MSXマガジン編集部 特別編集 / 1991年1月20日発行
駿河屋
Amazon ウィザードリィ外伝T攻略の手引き
ファミコン通信部責任編集 / 1991年10月31日発行
Amazon ウィザードリィ プレイヤーズ フォーラムVol.1
アスキー第四書籍編集部 / 1992年6月27日発行
駿河屋
Amazon 忍者増田のレトロゲーム忍法帖
2017年3月21日発行
インプレス
Amazon そういえば、モンスターデザイン担当の池上さん自身も『外伝T』をプレイしていたんだけど、 彼女のパーティーが全滅したというので、 拙者のパーティーを池上さんのカートリッジに通信ケーブルで送り込み、 死体を回収してあげたこともありました。 こういうことが手軽にできるのもゲームボーイの良さでしたね。
関連動画(YouTube):
ウィザードリィ・外伝(ゲームボーイ版) 高橋ピョン太と忍者増田が語るレトロゲーム雑談トーク番組
【ログプラスワン - 007】 ウィザードリィの深淵 -FC版WIZの30年-
ゆずもデザイン / 2017年5月14日発行
BEEP
をはじめに委託販売
「Hippon super!」1991年11月号 91〜93ページ
通信機能には触れた記事ではないが、 クロスレビューでゲームの難易度について指摘している文章があったり、
「友の会」内に掲載された攻略情報でもファミコン版との違いなどについて、
いろいろ書いてあったので今回取り上げてみた。 クロスレビュー 91ページ鈴木一弘、山本祐信、ベニー松山、根本康弘の4名がレビューし、それぞれ10点、10点、9点、8点と採点。 この中で個人的に取り上げたいのが、8点を付けた「友の会」担当者の根本康弘のレビューで、 プレイ雑記(ページ下)の方で一部抜粋してます。 友の会 92〜93ページゲーム序盤の攻略を目的とした特集で、参考用に地下4階までのマップが掲載されるも、 トラップ等は表示されないことから"デュマピック"頼みではなく、マッピングを推奨している。 また、新しい呪文である"ソコルディ"と"バモルディ"で召喚できるモンスターのデータ等もあり、 呪文中心の戦闘のシビアさであったり、お馴染みのリセット技についても言及されている。
「Hippon super!」1992年11月号 146ページ
続編である『ウィザードリィ外伝U』(92年12月発売)の通信に関連する読者投稿があったので今回取り上げてみた。
通信ケーブルを使ってキャラクターを転送する場合と「転生の書」を用いた場合の違いについて質問し、
アスキーの須田PINの電話での回答が誌面に掲載されている。 実際にゲームをプレイした雑記『Wizardry外伝T』の通信機能に触れた雑誌記事を探し始めてから数か月後の2017年夏から秋にかけての話。
Wizに何となく興味を持ったので、実際にプレイしたいなぁと思っていると、
ゲームボーイ版のドラクエ(ロトシリーズの『T・U』と『V』)や『魔界塔士Sa・Ga』、『聖剣伝説 FF外伝』、
『カエルの為に鐘は鳴る』などと共に中古屋で売っているのを見かけ、どれも以前から興味があったので、
この時に購入し(説明書なし)、エンディングを目指してプレイした。 このゲームボーイ版をゲームボーイの作品だから初心者向けだなどとは思わないで欲しい。 これこそまさにウィザードリィマニア、ファンのための作品だ。 今までのファミコン版ウィザードリィを1度以上プレイしながらも、 なぜ面白いのかが理解できなかった人はこの作品を遊んでもきっと何も得るものはないだろう。 あきらめたほうがいい。 一旦、本題に入る前に、
『ヒッポン』の読者投稿コーナー「ウィザードリィ 友の会」担当の根本康弘氏のレビューをまず引用し、
筆者がこの文章を読んだ2017年当時はWiz未経験だったので、話をうまく呑み込めなかったが、
その後実際にゲームをプレイしてみて、気持ちがよく分かりました。 脚注(本文に戻る)スペシャル・サンクス
ゲームの基本システム(職業・性格など)について紹介し、 呪文をまとめたページも参考に。 (冒頭でFC版との違いについて軽く触れている) 作成したキャラのロールプレイや各回ごとのステータス一覧が印象的。 かけるさんの紹介記事
ファミコン版の内容ではあるが、外伝Tでもそれなりに通用し、基礎知識として読むのをおすすめ! |